大里峠(おおりとうげ)
その1
大蛇になった
これは、むがしがら関川村に伝わる話だど。
女川の蛇喰(じゃばみ)に、忠蔵(ちゅうぞう)、おりの夫婦ど波(なみ)という娘の3人が、仲よう暮らしていだどさぁ。
「桂(かつら)の阿古屋谷(あこやだに)は大蛇が
いるでのに
、あそごのおっとは
おっかのがらねで
炭焼ぎしてるがねぇー」
そんな
村のしょ
の話が
聞けねんだが
、その日も山へ行って炭焼ぎしていだどさ。
ひるのまま
食べで寝でいるど・・・。
「 ? 」
なにか変な音がしてね、目さめでみだら、大蛇が忠蔵ば食べろどしていだんだど。
大きだ口がら、まっ赤な舌をペロペロと出してさ。
いるでのに
→いるというのに
おっかのがらねで
→こわがらないで
村のしょ
→村の人たち
聞けねんだが
→聞こえないのか
ひるのまま
→ひるごはん
「ウッー」
忠蔵はおどろいだが、脇にあった
よぎ
で大蛇にかがっていって、やっとのこどで大蛇ばしとめだど。
しばらぐ、ボーっとして気がついでがら、始末を
どうしょば
ど、いろいろ考えで、結局みそ漬けにするごどにしだどさ。
ちょうどいい大きさに大蛇ば切ってカマスに入れで、ウンコラ、ウンコラ
うぢ
へ運んで来だど。
よぎ
→まさかりのようなもの
どうしょば
→どうしようか
うぢ
→自宅
うぢはるすでさぁー。
納屋がら樽(たる)を出してきて、つぎつぎにみそ漬けにしたでがねぇー。
みんな漬けでがら、樽を
かんじょしたら
、13樽ど半分あったど。
「この樽の中は、決して見んなよ。おれが良いどいうまで、だめだぞ。」
忠蔵は、おっかあのおりのど、娘の波に
よう言うで
、炭焼ぎに行っていだど。
かんじょしたら
→数えたら
よう言うで
→よく言いきかせて
「おっとは見んなで言うだども、だいぶ日もたったし・・・、ちっと見でみようが。ほんのちょっとだば・・・。」
樽のふたを、ちっと取って見だら・・・、うすまっ赤だ肉が、うまそうにみそ漬けになっていたど。
「うまそだのー。ひと串焼いで食べでみろが・・・。」
おりのていうおっかは、火の端(はだ)で焼いで食べてみだら
「おやおや、なんと・・・うめごど。おら、今までに
こだうめもの
食べだごどねンガー。」
「もうひと串・・・。」
そだごど
言いながら、みんな食べてしもだど。
こだうめもの
→こんなうまいもの
そだごど
→そんなこと
「おらは、のどかわいだ。」
おりのは、うぢの水だげでは
たらので
、女川へ行って水飲みはじめだど。
しばらくして、水面にうづった顔見だら、自分の顔は大蛇になっていだど。
つの出はって
、とっても
おっかね
顔になってしもで、
「おっとが、見るなよで言ってだのを守っていれば良がった。あぁー申しわげねごどした。」
と言いながら、女川に入って上流へのぼって行ったどさぁー。
たらので
→足りないで
つの出はって
→つのが出て
おっかね
→こわい
夕方になって、忠蔵が帰ってきたら、
「おっか、
いのなった
ぁー。」
「
なだや
、おっか、
いねや!
」
「アーン、アーン、アーン」
忠蔵は、樽がからになっていたので、大蛇を喰ってしもだな、と思い、波と2人で女川の上流まで探しに行ったど。
したども、いねがったど。
いのなった
→いなくなった
なだや
→なんだって
いねや!
→いないのか!
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